現在日本の戸建て住宅のストックは約2800万戸と言われています。空き家の総数は約820万戸でそのうち約3割が戸建て住宅です。単純計算で戸建て住宅の約10件に1件が空き家となる計算です。人口が減少しているなか、今後ますます空き家が増える方向にあるでしょう。
そのような空き家問題に対して、既存ストックを活用しやすくするよう、建築基準法が改正されます。その一つとして用途変更に関する規定が大幅に緩和されます。
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■改正のポイント
今回の改正建築基準法の大きな項目の一つが、戸建て住宅から特殊建築物への変更の際に、用途変更の確認申請の手続きを不要とする対象を、100㎡以下から200㎡以下に拡大されることです。
戸建て住宅のストックの割合は100㎡未満が30%、100㎡以上200㎡未満が60%、200㎡以上が10%になっています。200㎡以下の戸建て住宅が約9割を占めており、緩和の対象となる戸建て住宅の数が大幅に増えることになります。
加えて小規模建築物の耐火構造に関する規制も緩和されます。3階建てで延べ面積が200㎡未満の住宅などを特殊建築物に変更する際に、柱や梁といった主要構造部を耐火構造に適合させる改修を不要とする特例が設けられます。
■用途変更の例
既存建物の用途を変更する際、規模が100㎡以上で「特殊建築物」と呼ばれる用途に変更する場合、用途変更の確認申請が必要です。例えば住宅を宿泊施設にする場合、事務所を物販店にする場合などがそれに該当します。
例えば、既存の住宅が空き家で活用の方法として、シェアハウスに改修しようとした場合、シェアハウスは寄宿舎に該当し、特殊建築物になります。
この場合、面積が100㎡未満であれば、用途変更の確認申請は不要ですが、100㎡以上の場合、用途変更の確認申請の対象となります。
確認申請書類を作成する際、既存建物の図面や構造計算書が必要となりますが、古い建物の場合、そういった資料が残っていないケースが多く、そのような場合、現況を一から調査して新たに図面を描き起こす必要があります。完成後の建物では外から見えない部分も多く図面や構造計算書を再現するのに多大な労力を要します。
また、特殊建築物の場合、主要構造部を耐火構造にする必要があり、適合させるには大掛かりな改修工事を要します。そういったところが障害になり、用途変更を断念せざるを得ないケースがあります。
■今後のストック活用
今回の改正によりこういったケースの場合でも、比較的容易に用途変更ができるようになり、社会のニーズに沿ったかたちで、既存建物のストックの活用が進むのではないでしょうか。
ただし、用途変更をする際は変更後の用途に関連した法規(消防法や老人福祉法など)に配慮が必要です。また、計画変更の確認申請を要しなくとも、建物は常に適法な状態に保つことは、建物の所有者として義務づけられていることに注意が必要です。
記事に書いた内容はほんの一例ですが、今回の制限緩和はさまざまなところで、既存ストックの活用の可能性が広がります。
【編集日記】
最近、会社に魔法瓶を持参しています。
いつでも暖かいお茶が飲めてとても快適です(いまさらですが)。