建物省エネ法が変わります

 

建物省エネ法が改正され、300㎡以上の非住宅にも適合義務が拡大されました。
これにより、確認申請時の省エネ適判の対象となる建物が増えることになります。

■建物省エネ法とは

平成27年7月に「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」が制定されました。この法律は、建物のエネルギー消費性能の向上を図るため、住宅以外の一定規模以上の建築物に対して、エネルギー消費基準への適合を義務化したものです。

建築主は一定規模以上の建築物の新築・増改築を使用とする場合、その用途や規模に応じて省エネ基準に適合していることの行政庁等の適合判定や、行政庁への届出が必要となります。

■適合義務の対象拡大

現行の建築物省エネ法では、延べ面積2000㎡以上の大規模建築物(非住宅)に省エネ基準への適合を義務付けおり、建築確認時に建築物エネルギー消費性能適合判定(省エネ適判)を受けなければいけません。300㎡以上2000㎡未満の中規模建物は着工前に届出の必要があります。

改正後は、適合義務の対象が拡大され、延べ面積300㎡以上、2000㎡未満の中規模建物(非住宅)についても省エネ適判が必要となります。

適合義務化によって確認申請時の省エネ適判及び、完了検査の手続きが必要になります。
着工後に入居者を募集するテナントビルなどでは、変更申請で数カ月単位の工期延長が必要になるケースが出る可能性もあります。また、設計事務所側も省エネ計算の手間や、着工後の設計変更に伴う負担も大きくなることが予想されます。

■十分な検討と十分な期間が必要

テナントビルでは、設計段階で想定していた業種と異なる業種が入居することがよくあり、その際、開口部の形状や設備の仕様など、省エネ性能に関わる内容を大きく変えてしまうことがあります。

従来のように着工前の届出だけであれば、着工後の変更については柔軟に対応できましたが、適合義務になると、変更後の内容についても省エネ基準に適合している必要がありかつ、変更申請や完了検査が必要になります。

適合義務の対象が300㎡以上に拡大されるということは、小規模なテナントビルでも上記の対象になりますので注意が必要です。
テナントを早期に決めることは難しい面がありますが、今後は設計段階での十分な検討と、変更を見越したスケジュール管理が必要になります。

【編集日記】
今シーズンのトライアスロンのレースをどれにしようか悩んでいます。
離島のレースも魅力的ですが、宿がなかなか見つからず悩ましいです。

目的・戦略・戦術から住宅を考えてみる

 

ビジネスの現場でよく使われる単語、「目的・戦略・戦術」はさまざまな場面で応用が利きます。これを住宅に置き換えて考えてみました。

■ビジネスの目的・戦略・戦術とは

サラリーマンの方であれば、普段の仕事の中でこれらの単語は日常的に使っているのではないでしょうか。私なりに考える定義はこのように考えています。

・目的とは、「何を達成したいか」(何のために)
・戦略とは、「何をやって、何をやらないか」(何を)
・戦術とは、「具体的な行動計画」(どのように)

これを仕事の一例に例えてみると(極端な例ですが)。

会社にとっての、
・目的は、「自社ブランドの商品を通じて人々を幸せにする」
・戦略は、「知名度を上げ、マーケットでのシェアを2倍にする」
・戦術は、「年間の広告宣伝費を2倍にする」
などになります。

因みに、会社の目的、戦略、戦術を各部門にブレイクダウンすると、
会社の戦略が、部門の目的になり、会社の戦術が部門の戦略になります。

部門の戦術は、まさにそれを策定することが、部門の仕事の一つになります。
このように段階的に順次細分化することを「カスケードダウン」というそうです。

■住宅に置き換えて考えてみる

住宅は人にとってなくてはならないものです。住宅に対する考え方は人それぞれですが、ここでは仮に目的を「幸せに暮らすこと」にします。

「幸せに暮らすこと」を実現するために戦略を立てます。予算の制約や、家族や仕事の事情など様々な与条件がありますが、幸せに暮らすためには、何をやって、何をやらないか
を考えます。

例として、
・都会に暮らすか、自然の中で暮らすか。
・海の近くか、山の中か。
・単身で暮らすか、家族で暮らすか。
・趣味に没頭するのか、仕事に生きがいを感じるのか。
・プライバシーを重視するか、積極的に社会と関わるか。

など、自分が幸せを感じるものが何か、それを実現するための住まい方は
どのような暮らしがフィットするかをじっくり考えます。
ここはぜひ自分一人だけでなく、家族の意見もぜひ取り入れて考えてみて下さい。
そこで出た答え(戦略)に対して戦術を立てます。

■戦術に偏りがち

戦術は戦略を実行するために立てます。

例として
・賃貸にするか、持家にするか。
・マンションにするか、戸建てにするか。
・中古にするか、新築にするか。
・駅前にするか、郊外にするか。
・モダンデザインか、クラッシックか。
・いつまでにいくら貯蓄するか。

など、戦略を実行するための具体的な選択肢や行動計画になります。

住宅を検討する際に、とかく戦術的な部分に目が行きがちですが、その前段階の「目的」と「戦略」をじっくり考えてみると、自分が住宅に求めているものが見えてくるのではないでしょうか。
住宅を検討する際に参考にしてみてはいかがでしょうか。

【編集日記】
今日は迷っていた鞄をゲット。
結局ファーストインプレッションが正しかったようです。
すっきりしました。

土地探しは自分探しの第一歩

賃貸、持家に関わらず、どこに、どんな風に住むのかが自分らしい暮らしに繋がり、人生の充実度に大きく関わると考えています。

■ 何処に住むか

進学や結婚などで地元を離れる理由がなく、生まれた地元でそのまま暮らす場合や、利便性を求めて職場や学校の近くで暮らす方も多いのではないでしょうか。
学生時代など、人生の一時期は住むところが変遷したとしても、いつかは定住する場所を決める時が来ます。

賃貸か持家か、マンションか戸建て住宅かに関わらず、何処に住むかは、どんな家に住むのかと同じぐらい重要なことです。

■その土地にどんな建物が建つか

住宅を購入する際、マンションの場合は あらかじめ間取りが決められていて、その中から予算と自分の暮らしに合った間取りを選ぶ場合がほとんどです。戸建て住宅の場合は建っているものを買う場合と、土地から探しそこに好きな住宅を建てる場合がありす。

後者の場合、予算の範囲内であれば、好きなように建てられる。しかし、その土地にどんな家が建つのかの前に、どんな風に暮らしたいかが重要です。

■土地を探すときは建築家に相談

建築家はその土地にどのような建物がたてられるか、その場である程度分かります。
前もってどの様に暮らしたいかを、建築家に伝えておくと土地探しがスムーズでしょう。

定住する場所を決めることは、人生の中でも大きなイベントで、現実的な制約が多いのも事実です。しかし、自分自身のありたい姿(ソフト面)と同様に、住む場所と住み方(ハード面)についてもありたい姿を描くことは、人生の充実度アップに繋がると思います。

【編集日記】
今日は終日事務所内での作業と、打合せが2件。
年始のご挨拶対応であまり仕事は捗りませんでした。

台風で雨漏り、その対応策は?

小田急線駅舎のトラス屋根

 

昨年は各地で台風が猛威をふるいました。台風で雨漏りの被害にあわれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
雨漏りした場合に火災保険が適用できる場合があります。また、新築の住宅で10年以内であれば、瑕疵担保保証が適用で切る場合があります。

火災保険

住宅を購入した場合には必ず火災保険に加入します。火災保険といえば火事の時にしか補償されないと思っている方も多いかもしれませんが、火災以外の災害に対しても保険が適用できる場合があります。
「風害」「雹(ひょう)」「雪災」が火災保険に含まれていれば(選択していない場合もあるので要確認)、それらが原因で起こった場合対象となります。

具体的に「風害」とは、強風で屋根瓦が飛んで漏水した。又は、風で飛んできた飛来物が屋根に当たり損傷し、そこから漏水したなどです。
強風などで建物が損傷せず単に漏水しただけの場合は対象になりません。
(保険の商品はさまざまですので、詳しくは加入している保険会社に問い合わせが必要です)

住宅瑕疵担保責任

火災保険が適用できない場合でも、新築から10年以内であれば、住宅瑕疵担保責任が適用できる場合があります。
新築住宅を供給する事業者は「住宅瑕疵担保履行法」という法律で住宅の引き渡しから10年間の瑕疵保証責任が義務付けられています。
義務付けられている内容は、「構造耐力上主要な部分」及び「雨水の浸入を防止する部分」が瑕疵担保責任の範囲です。

屋根、外壁、開口部、排水管が「雨水の浸入を防止する部分」にあたり、その部分が原因で雨漏りした場合、瑕疵保証の対象になります。
ただし、10年以上経過した建物は対象になりません。
築10年以内で雨漏りした場合は、住宅を建設した建設会社に問い合わせてみてはいかがでしょうか。

まとめ

住宅に漏水等のトラブルがあった場合、まずは専門家に相談することが大事ですね。保険や瑕疵担保が適用できれば、賢く出費を抑えることができます。

また、住宅の火災保険などは、購入時の手続後、何もなければそれっきり見返すことも少ないので、一度加入している住宅保険の内容を確認してみてはいかがでしょうか。

【編集日記】
今日は妻が仕事のため、子供(3歳)とお留守番、プラレールで遊びました。
サンタさんにもらったコマチとハヤブサがお気に入りです。

「田根剛│未来の記憶 Archaeology of the Future-Search & Research」 展


展示場会にて(写真撮影の許可あり)

12月に「田根剛│未来の記憶」展に行ってきました。
会期はもう終わってしまいましたが、東京オペラシティ アートギャラリーと、TOTOギャラリー・間、の二か所同時開催で、TOTOギャラリー・間、の方を観てきました。

建築家、田根剛氏

田根氏は1979年生まれの39歳、現在はフランスを拠点に世界で活躍されている建築家です。2006年に26歳の若さで国際コンペ「エストニア国立博物館」で最優秀賞を授賞し,2016年に10年の歳月をかけて、ようやく竣工したことで広く知られています。

2012年には、2020年東京オリンピック、新国立競技場の基本構想国際デザイン競技のファイナリストとして選出されたことでも大きな話題になりました。

アイデアの発掘と収集

田根氏が建築をつくるときの手法は、場所の記憶を遡り考古学者のように遠い時間から場所の記憶を掘り起こし、それを建築に飛躍させる手法をとっています。

エストニア国立博物館では、その手法が見事に建築に昇華されています。エストニアはバルト三国のひとつで、旧ソ連に属していました。敷地は旧ソ連軍の空軍基地で、その旧軍用滑走路の延長線上に建物を計画し、滑走路から徐々に建物が立ち上がり博物館の屋根へとつながる大胆かつ明快な建築です。場所の記憶からつくる建築として、エストニアの未来の記憶へとつながる見事な建築計画であり、まさに田根氏の代表作といえる建築です。

イメージと建築をつなぐ展示

エストニア国立博物館以外にも多数のプロジェクトの展示がありました。
建物の規模、用途はさまざまですが、展示方法は場所の記憶を深堀するイメージ写真のコラージュと、建築模型だけで構成されていますが、その建築の成り立ちが良くわかる内容になっていました。
それは、「内なる言葉をイメージする」→「イメージに形を与える」→「形を建築にする」一連の流れがよくわかる構成で、まさに田根氏が提唱する「Archaeology of the Future」(未来の考古学)を体感できる展示でした。

建築展と聞けばなんだか難解そうなイメージもありますが、たまには建築展に行ってみるのはいかがでしょうか。街並みの見方が変わるかもしれません。

【編集日記】
今日は仕事初め。年末に大掃除したおかげでデスク廻りが綺麗さっぱり、
快適に仕事が出来ました。この状態を常に保ちたいところです。